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All Essays


旅の朝の気配
忙しさの中で見失っていた感覚を、ふとした時間に取り戻した。
白湯の温度、ベランダの光、静けさに触れたとき、胸の奥に小さな喜びが満ちていく。
“旅の朝の気配”は、遠くに行かなくても自分の中に残っていた。
6 日前


半径3mの原点へ還る
旅の朝のような静けさは、特別な場所にだけあるものじゃない。
部屋の一角を整えたその瞬間、呼吸がふっと柔らかくなり、
忘れていた“自分のペース”が静かに戻ってきた。
11月29日


満ちる、ということ
「今日が最後でもいい」と幼少期から言い続けてきた人がいると聞いて衝撃を受けた。私はそう感じた日を一日でも送れたことがあっただろうか。満足と不足のあいだで揺れ動く日々。朝のコーヒーを飲みながら、「満ちる」ということについて考えた。まだ途中にいる旅の記録。
11月3日


何も起きなかった、あの夕暮れ ──観光と暮らしの隙間で
待っていた人の背中 ゆんたくは、開催されなかった。 本当は体験するはずだった、沖縄らしい暮らしの文化。 けれど、私はその集落の空気に、不思議と包まれていた。 散策の途中、ぽつんと座っていたおじぃの姿があった。声も交わさず、ただ風景の一部のように佇むその背中。缶ビールを片手に、静かな夕暮れをじっと待っているようだった。 その場に流れるゆっくりとした時間。 しばらくして、自転車で帰っていくおじぃを見かけた。 「あのおじぃ、ゆんたくを待ってたんだよ」 集落を案内してくれた地元の人が、ぽつりと教えてくれた。 誰に言われるでもなく、ただそこにある時間。 あの空気が、とてもよかった。 ピンクの電話と、チョークの跡 観光として何か”イベント”が起こったわけではない。けれど、その静かな夕暮れが、忘れられない。 沖縄で、“懐かしさ”を感じるとは思わなかった。 それはたぶん、私がかつて子どもの頃に見た風景よりも、もっと昔の田舎の風景と重なったから。 具体的な記憶ではなく、肌で覚えていた空気の質感。 なんとなく知っている、というノスタルジー。 子供たちがケンケンパをす
10月30日


「きおくを、翔る(かける)旅」――やんばる・静かな集落のフォトリトリート
見たことがないのに、懐かしい。やんばるには、忘れていた時間が生きている。石敢當、芭蕉布、ゆんたく。記憶を翔る旅へ。沖縄北部の集落を巡る、フォトリトリート。
10月20日


言葉を捨てるために言葉を突き詰める
問いから始まる旅 「色」という概念が存在しない世界で、「赤」をどう伝えるか。 そんな問いかけから始まった会話は、いつの間にか私たちを、思いがけない場所へ連れて行った。 最初はこう考えた。 太陽の暖かさ、情熱の高ぶり、心臓の鼓動の音、血液、食べ物の甘さ…...
9月24日


器と料理の対話──魯山人の美意識が息づく界 加賀の旅
「当意即妙の連続でなければ真の芸術ではない─」 その言葉が、界 加賀のトラベルライブラリーで「いろは屏風」を前にしたとき、ふと脳裏をよぎった。酔筆とも言われるこの「未完」の書が、400年を重ねた白銀屋の建物の奥で、静謐に息づいている。 起源を紡ぐ場所──白銀屋と魯山人の縁 界 加賀──その前身である白銀屋は、寛永元年(1624年)の創業以来、前田家の久姫の定宿として知られ、また魯山人が滞在した場所でもある。ここには魯山人直筆の「白銀屋」の看板や、「白掛鉄色絵雪笹小皿」など、彼の足跡を生き生きと伝える作品が保存されている。 魯山人が九谷焼と出会い、陶芸の世界に心を惹かれていったのも、須田菁華との交流によってであった。この地で培われた「器は料理の着物」という思想は、美と実用を一体と見る視線を、今日の界 加賀のもてなしへと静かに繋げている。 器と料理が奏でる共鳴──もてなしの総合芸術 夕食の膳が運ばれてきた瞬間、400年の時を超えた邂逅が始まった。 まずはガラスと九谷焼が組合わされた九谷和グラスの美しさに魅了された。次々に運ばれてくる北陸海宝会席の美し
9月21日


Stay Stories−Halekulani−
“What you do not have you find everywhere” 持っていないと思っていたものを、ここでは見つけることができる — 1883年から2025年へ。漁師たちが名付けた「天国にふさわしい館」で紡がれる、時を超えた癒しの物語 -----...
8月22日


清め箸に宿る祈り―軽井沢「くろいわ無二」植物が奏でる懐石の調べ―
夏越の夜に 六月の終わり、「くろいわ無二」の暖簾をくぐると、そこは別世界だった。軽井沢には珍しい和の空間で、今宵味わうのはただの懐石料理ではない。特別に用意してもらったプラントベースの懐石料理——動物性の食材を一切使わず、植物だけで表現する日本料理の真髄。...
8月4日


Stay Stories−THE HIRAMATSU 軽井沢御代田−
森が迎えてくれた午後 ホテルの敷地に入った車は整備された緩やかな坂を登っていく。エントランスへの道のりが静かに高揚感を掻き立てる。車寄せへと続く道は既に日常からの脱出だった。到着した瞬間、私を包んだのは建物の美しさ以上に、その圧倒的な静寂。都市の喧騒が嘘のように遠ざかり、代...
7月29日


カメラが壊れた日、感性がひらいた-奄美大島 リトリートの記録-
奄美大島、ひとりのリトリート旅 プロローグ カメラが壊れた。 旅の始まりに、まさかのアクシデント。 奄美大島に到着してまだ数十分。 送迎車の運転手さんが「展望デッキに寄りますよ」と案内してくれた瞬間、胸が高鳴った。 「カメラが趣味なんです。行ってきます!」...
6月30日


2歳の自分に会いにいく
おそらく、わたしの人生の転機となる大切な何かは、このときに起きていた。3ヶ月間の田舎生活で。きっと人生で一番自由に、制限なく、たくさんの愛を感じてのびのびと過ごしていたのだろう。 母の入院と妹の誕生。家族にとって大きな変化の時期に、わたしは祖父母の元に預けられた。2歳の記憶...
6月28日


私の髪はハワイがお好き
気づきは、6度目のハワイで ハワイ渡航6回目にして、初めて気づいた。 2025年の春、あの風と太陽のもとで、私は40年以上抱えていたコンプレックスの一つと静かに決別した。 ——私は初めて自分の髪が好きになったのだ。 子どもの頃からずっと悩みの種だった髪質。...
6月25日


選ばれなかった照明に
選ばれなかった照明に、私はたしかに「光」を込めていた。 その空間に似合うと思ったし、お客様の言葉を受け止めて、手配も調整した。本来は変更できないタイミング。それでも尽力したのは、この照明に変えたいと言われた商品が、予算が許すのならお勧めしたいものだったから。...
6月4日


着たい服が変わるとき、それは人生が変わるとき
服を買いに出かけたり、ファッション関係のウェブメディアやECサイトを見たりしているとき、思い返せば40歳になるくらいの頃から、会社には着ていけないであろうカジュアルな服や派手なアイテムに目が行くようになった。 自由やリラックス、肩肘張らない人生を潜在的に望んでいた表れだと思...
5月28日


sense awake ―半径3mの気づき―
仕事からの帰宅中、何故かひどく疲れ果てて、起きていられないほどの睡魔に襲われたことがあった。 その日は最低限の身支度だけをして、寝るにはだいぶ早い時間に就寝することにした。相当早い時間に寝たので予想通りではあったが、かなり早い時間に目が覚めた。...
4月28日


ジェットストリームへの憧憬
「ジェットストリームというラジオ番組、ご存知ですか?」 お世話になっている編集者さんが、私のエッセイやウェブサイトの話をしているときにそう言った。読みながらこの番組を思い出したのだという。 驚いたのは、それを耳にしたちょうど二週間前、私はフライト中にその番組を聴いていたこと...
4月28日


宇宙船の中
私は飛行機で眠れない。電車やバスなら秒で寝られるのに。どんなに眠い状態で搭乗しても、快適なはずのビジネスクラスのフルフラットシートでも、たいてい目を瞑っているだけでほとんど起きている。寝ることができたとしても1時間くらいがいいところ。...
4月13日


自由をまとう
休日の朝、クローゼットを見て思う。 悪くないけど、なんか退屈……。 街に溶け込むような無難な安心は求めていない。 そんなとき、私はこのコートを羽織る。 青、緑、黄、白——まるで抽象画のように色が踊る。一目惚れだった。初めて目にした夏の頃、絶対に買うと心に決めた。数ヶ月後、試...
3月29日


五感を刺激するコーヒー時間
待ちに待ったカフェイン解禁日。ファスティングのためにカフェインをやめた8日間。辛くはなかったけど、大好きなコーヒーを飲める今日という日を心待ちにしていた。 まずは今の気分に合わせた音楽をかける。心地よいアコースティックギターのボサノヴァがいつものダイニングをカフェにする。鉄...
3月14日
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