半径3mの原点へ還る
- coolmintjam2
- 6 日前
- 読了時間: 3分
最近、心ではなく“ペース”のほうが
どこかざわつく日が続いていた。
ダイニングのテーブルには、
読みかけの本や資料が重なり、
少し前まで書斎として使っていたデスクも、やろうとしていたことの痕跡だけを残して
時間が止まったように散らかっていた。
本当は、一日のリズムを整え、光に気づき、
旅のように生きる感性がひらくはずの場所。
なのに、いつの間にか
その“原点”を自分の手で曇らせてしまっていた。
忙しさのせいにしていたけれど、
本当はずっと分かっていた。
これは心の問題ではなく、
私のペースが乱れていたのだと。

ある朝、
散らかったままのテーブルに
やわらかな光が落ちているのが見えた。
その光が、呼び戻すように
胸の奥で小さな音を立てた。
私はそっとテーブルのものを一箇所に寄せた。
完全に片づけようとすると苦しくなるから、
まずは形を整えるだけでいい。
小さな花を一輪。
深呼吸をひとつ。
それだけで、
空間のくぼみに残っていたざわつきが
ゆっくりとほどけていった。
すると、
その静けさのなかで、
ふいに胸の底から一つの言葉が浮かび上がってきた。
「あなたが本当にやりたいことは何なんですか?」
以前この問いを投げかけられたとき、
私はうまく答えられなかった。
焦るほど見えなくなり、
形にしようとするほど遠ざかる。
その繰り返しの中で、
また迷子になったと思っていた。
でもいま、静かに分かる。
見えなくなっていたのは“答え”ではなく、
その答えへ向かっていく私のペースのほうだったのだと。
マネタイズのこと、
必要な準備や計画、
やらなきゃと自分に課していたあれこれ。
それらに押し出されるたび、
半径3mの静けさはまっ先に消えていった。
けれど本来、
私が世界と関わる入口は、
いつもこの“身のまわりの小さな場所”だ。
光の差し方。
影の形。
カップに残った温度。
その一つひとつに気づくとき、
旅のときのように、
私の感性のチャンネルがそっと開いていく。
遠くではなく、
ここから。
大きな目標でも、
壮大な計画でもなく、
半径3mの静けさに気づける自分へ戻ることから
すべては始まる。
空間を整えるという行為は、
暮らしのためだけでなく、
自分を再び“中心”へ戻すための
小さな儀式なのだと思う。
急がなくていい。
焦らなくていい。
ただ、今日の光に気づける自分へ
そっと戻っていけばいい。

その原点に還ってこれた日は、
世界のほうが静かに動き出す。
そしてまた明日も、
この半径3mから
私のペースを始めていけばいい。


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