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ジェットストリームへの憧憬

更新日:8月19日

「ジェットストリームというラジオ番組、ご存知ですか?」


お世話になっている編集者さんが、私のエッセイやウェブサイトの話をしているときにそう言った。読みながらこの番組を思い出したのだという。


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驚いたのは、それを耳にしたちょうど二週間前、私はフライト中にその番組を聴いていたことだった。


寝るつもりでいた夜の便。映画ではなく、機内エンタメのラジオを選んだ。迷うことなく「ジェットストリーム」を再生したのは、父が好きでよく聴いていた記憶があったからだ。


家には、背表紙に父の丸々とした文字で「ジェットストリーム」と書かれたカセットテープがあった。自分で録音したものなのか、購入したものなのかはわからない。建築士だった父は、ラジオを聴きながら仕事をする人だった。束の間、空想の旅に出ることでリフレッシュしていたのかもしれない。


私はそんな父のカセットが気になり、何度も繰り返し聴いたのを覚えている。


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印象的なのは、やはり番組の冒頭だ。

空港のアナウンス、滑走路を走る飛行機のエンジン音——旅の始まりを告げる音たちが、想像力を掻き立てる。そして流れる「ミスター・ロンリー」。イケボのナレーションが、耳に心地よく染みわたる。


夜行便の機内で聴く「ジェットストリーム」は、格別だった。窓の外に広がる夜空を眺めながら、懐かしさとともにじんわりこみ上げるものがある。やっぱり、いいなぁ。今も昔も、旅情をかきたてるこの番組は、変わらぬ存在なのだ。


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実は、私のウェブサイトのトップページには「ジェットストリーム」からインスピレーションを得た写真をセレクトして並べている。


編集者さんとの会話がきっかけで、その後、radikoで改めて番組を聴いてみた。音だけで旅へと誘う構成は、小説を読むよりもダイレクトに脳内を刺激し、日常から瞬時に異空間へと連れ去る。


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その日の放送では、作家・村上春樹氏が旅先での日々を綴ったエッセイが朗読されていた。それを聴きながら、ふと無謀な願いが頭をよぎる。


いつの日か、私のエッセイが「ジェットストリーム」で読まれる日が来ますように、と。

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