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「きおくを、翔る(かける)旅」――やんばる・静かな集落のフォトリトリート

更新日:11月17日

畑の向こうに、透き通る海が。


光は葉の隙間をすべり、風が頬に触れて消える。


沖縄の北部、大宜味と東村。


子どもの頃に訪れた田舎のような、いや、もっともっと昔の…そんな空気がやんばるにはある。


石垣の隙間から生えるシダ、風に揺れる芭蕉の葉、どこからか聞こえる機織りの音。


見たことがないのに、懐かしい。


それは、自分の中にある「忘れていた時間」が、ここにまだ生きているから。


フォトリトリートは、カメラを持って記憶を翔る旅。


この景色に出会うために、立ち止まった──



Ⅰ.入口──記憶の扉


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階段を登ると、時が遡り始める。



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緑のトンネルを抜けると、海が待っていた。



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石の道が静かに導いていく。



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水が落ちる音だけが、時を刻む。



Ⅱ.集落の記憶──刻まれたもの


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石に刻まれた文字。誰かが誰かを守ろうとした祈り。



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フクギの木陰に佇む家。風に守られ、時間に忘れられ。



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誰もいない道。でも確かに、ここを誰かが歩いていた。




Ⅲ.手を動かす──受け継がれる技


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糸を通し、踏み木を踏む。100年前と同じ、手の動き。



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コンクリートの塀に挿されたススキ。魔除けの、小さな祈り。



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92歳の手が、今日もススキを編む。サングァーを作ることが、集落を守ること。




Ⅳ.暮らしの温度


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ピンクの公衆電話の隣に、手書きの電話番号。ここでは、まだこうやって繋がる。



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古酒の甕に手を添える。時が、ゆっくり味になる。



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朝、玄関に光が差し込む。ここで眠り、また旅に出る。

次は「ただいま」と言おう。



Ⅴ.還る場所


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パイナップル畑に沈む夕日。一日が静かに終わる。



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地面の落書き。雨が消しても、また誰かが書く。



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海は、すべてを包む。記憶が溶けて、また翔る。



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空に浮かぶ三日月。終わりは、いつも始まりの予感。




エピローグ

やんばるで出会ったのは、石に刻まれた祈り、手で紡がれる布、毎日交わされる言葉。

それは、自分の中にあったはずの、忘れていた時間。

記憶を翔る旅は、過去を訪ねることではなく、未来へ還るための道しるべ。

また戻ってきたいと思う。それはここが「還る場所」だと気づいたから。


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