「きおくを、翔る(かける)旅」――やんばる・静かな集落のフォトリトリート
- coolmintjam2
- 10月20日
- 読了時間: 2分
更新日:11月17日
畑の向こうに、透き通る海が。
光は葉の隙間をすべり、風が頬に触れて消える。
沖縄の北部、大宜味と東村。
子どもの頃に訪れた田舎のような、いや、もっともっと昔の…そんな空気がやんばるにはある。
石垣の隙間から生えるシダ、風に揺れる芭蕉の葉、どこからか聞こえる機織りの音。
見たことがないのに、懐かしい。
それは、自分の中にある「忘れていた時間」が、ここにまだ生きているから。
フォトリトリートは、カメラを持って記憶を翔る旅。
この景色に出会うために、立ち止まった──
Ⅰ.入口──記憶の扉

階段を登ると、時が遡り始める。

緑のトンネルを抜けると、海が待っていた。

石の道が静かに導いていく。

水が落ちる音だけが、時を刻む。
Ⅱ.集落の記憶──刻まれたもの

石に刻まれた文字。誰かが誰かを守ろうとした祈り。

フクギの木陰に佇む家。風に守られ、時間に忘れられ。

誰もいない道。でも確かに、ここを誰かが歩いていた。
Ⅲ.手を動かす──受け継がれる技

糸を通し、踏み木を踏む。100年前と同じ、手の動き。

コンクリートの塀に挿されたススキ。魔除けの、小さな祈り。

92歳の手が、今日もススキを編む。サングァーを作ることが、集落を守ること。
Ⅳ.暮らしの温度

ピンクの公衆電話の隣に、手書きの電話番号。ここでは、まだこうやって繋がる。

古酒の甕に手を添える。時が、ゆっくり味になる。

朝、玄関に光が差し込む。ここで眠り、また旅に出る。
次は「ただいま」と言おう。
Ⅴ.還る場所

パイナップル畑に沈む夕日。一日が静かに終わる。

地面の落書き。雨が消しても、また誰かが書く。

海は、すべてを包む。記憶が溶けて、また翔る。

空に浮かぶ三日月。終わりは、いつも始まりの予感。
エピローグ
やんばるで出会ったのは、石に刻まれた祈り、手で紡がれる布、毎日交わされる言葉。
それは、自分の中にあったはずの、忘れていた時間。
記憶を翔る旅は、過去を訪ねることではなく、未来へ還るための道しるべ。
また戻ってきたいと思う。それはここが「還る場所」だと気づいたから。




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