きおくを、翔る(かける)──やんばる・静かな集落のフォトリトリート
畑の向こうに、透き通る海が。
光は葉の隙間をすべり、風が頬に触れて消える。
沖縄の北部、大宜味村と東村。
子供の頃に訪れた田舎のような、いや、もっともっと昔の・・・そんな空気がやんばるにはある。
石垣の隙間から生えるシダ、風に揺れる芭蕉の葉、どこからか聞こえる機織りの音。
見たことがないのに、懐かしい。
それは、自分の中にある「忘れていた時間」が、ここにまだ生きているから。
フォトリトリートは、カメラを持って記憶を翔ける旅。
この景色に出会うために、立ち止まった──
Ⅰ. 入口──記憶の扉
階段を登ると、時が遡り始める。
緑のトンネルを抜けると、海が待っていた。
石の道が静かに導いていく
水が落ちる音だけが、時を刻む。
Ⅱ. 集落の記憶──刻まれたもの
石に刻まれた文字。誰かが誰かを守ろうとした祈り。
フクギの木陰に佇む家。風に守られ、時間に忘れられ。
誰もいない道。でも確かに、ここを誰かが歩いていた。
Ⅲ. 手を動かす──受け継がれる技
糸を通し、踏み木を踏む。100年前と同じ、手の動き。
コンクリートの塀に挿されたススキ。魔除けの、小さな祈り。
92歳の手が、今日もススキを編む。サングァーを編むことが、集落を守ること。
Ⅳ. 暮らしの温度
ピンクの公衆電話の隣に、手書きの電話番号。ここでは、まだこうやって繋がる。
古酒の甕に手を添える。時が、ゆっくり味になる。
朝、玄関に光が差し込む。ここで眠り、また旅に出る。
次は「ただいま」と言おう。
Ⅴ. 還る場所
パイナップル畑に沈む夕日。一日が静かに終わる。
地面の落書き。雨が消しても、また誰かが書く。
海は、すべてを包む。記憶が溶けて、また翔る。
空に浮かぶ三日月。終わりは、いつも始まりの予感。
エピローグ
やんばるで出会ったのは、石に刻まれた祈り、手で紡がれる布、毎日交わされる言葉。
それは自分の中にあったはずの、忘れていた時間。
記憶を翔る旅は、過去を訪ねることではなく、未来へ還る道しるべ。
また戻ってきたいと思う。それはここが「還る場所」だと気づいたから。